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『夕凪の街 桜の国』
感動度 2007/07/28公開 (公式サイト)
泣き度 笑い度 満足度 【監督】佐々部清 【脚本】国井桂/佐々部清 【原作】こうの史代 『夕凪の街 桜の国』(双葉社刊) 【時間】118分 【出演】 田中麗奈/麻生久美子/吉沢悠/中越典子/伊崎充則/金井勇太/田山涼成/粟田麗/藤村志保/堺正章 <ストーリー> 原爆投下から13年後の広島。そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白される。だが彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、やがて皆実に原爆症の症状が……。半世紀後。今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。そんな父を心配する娘の七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に、旭の後を追って広島へ向かう……。(goo映画より) ≪予告編≫ 人気ブログランキング参加中♪ ポチッとして頂けると嬉しいです →日本映画ランキング <観賞前コメント> 先日広島に遊びに行ったらこの作品のポスターがいたる所に貼ってありましたよ。ちょうど「原爆の日」の前日だったので平和公園にいってお祈りもしてきました。僕も以前広島に住んでいた(数年)ことがあるのでこの時期になるとやっぱり想うところはあります。でもこういう歴史ってなかなか学校では学べないので映画から教えてもらえることもたくさんあるんですよね。田中麗奈さんや麻生久美子さんも大好きだしどういう風に描かれているのか楽しみです。 <感想> 正直、原爆が題材ということで観たいような観たくないような微妙な心境でした。僕は広島出身じゃないので広島で平和教育を受けたことはないのですが、何度か広島で学生の平和イベント(平和公園や資料館を回ってディスカッション)に参加したことがあります。被爆者の方の話も聞いたし資料館の写真などが脳裏に焼きついていて、あまり思い出したくないというのが本音だったりします。。僕でさえそうなのに広島の方は、まして実際に被爆された方は尚更でしょうね。でもやはり目を背けてはいけない歴史だと思うし、今回は原爆が落とされてから13年後の広島が舞台ということでどんな風に描いているのか興味が湧き、観てきました。 物語は原爆の13年後を描いた「夕凪の街」と現代の「桜の国」の二部構成でした。やはり苦しめられる姿を描いた「夕凪の街」の方が力がありましたね。演出は過剰に被害を訴えたり感動を誘おうとしたものではなく抑えた演出だったのですが、すごく心に響いて自然に涙が溢れてきました。抑えた表現の中で時折発せられるズッシリと重いセリフも心に突き刺さってきます。 「何で原爆は広島に落ちたんじゃ!」 「落ちたんじゃなくて落とされたんよ」 「どこかでお前の住む世界はそっちじゃないという声がする」 「うちは幸せになったらいけんような気がする」 「ひどいなぁ。てっきり私は死なずにすんだ人かと思ったのに」 「原爆を落とした人は私を見て 『やったぁ、また一人殺せた』って思うてくれとる?」 「忘れんといてな、うちらのこと」 今年は大臣の発言問題なんかもあったので余計にセリフが胸に響きました。アメリカはロシアの参戦を止めるためだとか原爆を落とさないとさらに何倍もの死者が出たなどと正当化はしてますけど、その場で死んだ十数万人もの被爆者、その後何年も苦しんで亡くなった方、60年間苦しみ続けている方、二世三世で不安を抱き続けている方のことを思うと、「しょうがない」なんて口が裂けても言えないですよね。被爆者の1人1人に家族がいて友人がいて恋人がいて、輝かしい人生があった、そんな当たり前のことを想像できないんでしょうね。。 本作は直接原爆を描くのではなく、1人の女性・皆実の姿を中心に描いています。ということで皆実役の麻生久美子さんにかなり感情移入して観ていました。13年後ということで街には活気が溢れているように見えますけど、やはり確実に影は落としているんですよね。入浴のシーンは痛々しくて目を逸らしたくなりました。そしてやっと原爆の呪縛から解放されようとしたところで原爆症に襲われる。。なんて救いのない物語。でもきっと現実はこんなものじゃないんだろうなぁ。 麻生さんは可愛らしいんだけど被爆者ゆえの屈折した思いを持つ女性を好演していました。生き残ったのに「幸せになったらいけない」「死ねばいいと思われるような人間になっている」なんて考えてしまうなんて悲しすぎます。でも透明感のある儚い役はピッタリでしたね。方言はイントネーションを付け過ぎで微妙でしたが(笑)、そんなのは気にならないくらい良かったです。皆実が思いを寄せる打越役の吉沢悠さんも誠実さが伝わってきて素敵でした。方言もうまかった気がするし、かなり好印象でした。旭役の伊崎さんもいい味出してました。実年齢は麻生さんより年上なのに高校生役をやるんだからすごいですね(笑)。 一方の「桜の国」は皆実の弟・旭の娘を演じる田中麗奈さんが主人公の現代の物語。前半に比べて妙にコミカルで違和感を感じたんですが、あえてそのギャップを狙っているのかなぁ。狙っていたんだとしてもちょっと気が抜けちゃいました。いくらなんでも家族に話さずに泊まりで広島に行くっていうのはねぇ(苦笑)。リアリティがなさ過ぎだもん。堺さんの逃げ方もギャグっぽいしちょっとやり過ぎ感もありました。まぁ田中麗奈さんと中越典子さんの尾行は可笑しくて楽しめたんですけど。自分のルーツを見つめ直して「私はこの2人を選んで生まれてこようと決めたのだ」ってセリフは印象的でした。 個人的には考えさせられるものもあったし単純に感動もできて満足したのですが、広島の方の受け止め方ってどうなんだろう?すごく気になります。僕が広島にいた時に感じたのは、広島人にとって原爆をどのように伝えるか?ってことが思っている以上にデリケートな問題だったことでした。毎年毎年、原爆が落とされてから日にちが経つにつれ多くの被爆者が亡くなっていて、原爆を語れる人がいなくなっているっていうのが大きな問題になっています。絶対に風化させてはいけない歴史ですけど、やはり体験者がいなくなるっていうのは風化を加速させる最大の要因。なので今後どのように伝えていくかっていうのは直面している最大の課題なんですよね。 そんな中、数年前に平和イベント(作る側)に参加したんですけど、広島の人(僕が知り合った)は絶対に自分達が受けた被害だけを伝えようとはしないんですよ。必ず日本が中国・韓国やアジアの国々にやってきたこともセットで伝えようとします。それは至極正論だと思ったのですが、そのイベントはヨーロッパの学生も参加するものだったので、広島の特性(+イベントの時間)を考えれば、とりあえず日本のやったことは短めにして、原爆はどんなものかを伝えた方がいいと主張すると、頑なに反対されてしまいました。で、その時の広島人の反応があまりに断固たるもので下手をすれば加害者としての日本の方を強く主張しそうな勢いだったので、被害を訴えることに異常なほど過敏になってるんだなぁっていうのを痛感したんですよね。県外出身の立場で言うと(正直原爆などの平和教育はほとんど受けてこなかったので)、もっと主張した方がいいと思うしそれが「ヒロシマ」(ナガサキ)にしかできないことだと思うのですが、不自然なほど中立な立場を取ろうと努めてるし、というかあまりにも遠慮し過ぎで奇妙な違和感を感じました。なので本作の皆実のセリフなんかはストレートでちょっとビックリしたんですよね。ということでこの映画を観て広島人はどういう反応をしたのかっていうのはすごく気になりました。 遠い国の話でもなく身近な話なんだけど県外にいるとやはりなかなか原爆について考えることってないし、思いを馳せるのにはいい機会になりました。特にこの時期に考えるのって大事なことですよね。映画自体は全く押し付けがましくない素敵な作品だと思うので興味がある方は是非ご覧になってください。オススメです。 ただ前半(夕凪)だけ観て後半は席を立つ人もチラホラいました。まぁそれはそれでいいような気もします(笑)。前半が良かっただけにちょっともったいなかったなぁ。 ☆参考になったり共感できた方 ココをポチッとお願いします より詳しい最新映画・芸能情報、人気ブロガーの感想は 人気ブログランキング or にほんブログ村へ 【これ好き!満足度アンケート!!】 本作が面白かった方&アンケート結果→こちら 本作がイマイチだった方&アンケート結果→こちら
田中麗奈出演作 麻生久美子出演作 |
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とても素敵なレビューですね!
恥ずかしながら私は広島に行ったことがないですし、平和公園や原爆記念館にも足を踏み入れたことがないです。
この映画を観て、改めて自分も無関係ではないとだと、いつか行こうと思いました。
最初桜の国の雰囲気があまりにも前半と違いすぎて、どうしても馴染めずにいましたが、この差が体験者と戦争を知らない世代とのリアルな温度差なのかな〜とも納得しました。
原爆について話をしたくないという気持ちは解りますが、コソコソ部屋から出て外泊するというのはあまりにもリアル感なかったようで残念ですよね〜
こんにちは♪
広島ってあまり行かないですよね。
国際平和都市ってことで外国人観光客は結構いるんですけど
平和公園とか意外は特に何ももないし(苦笑)
あっ、あと宮島があるくらいですね。
でも原爆資料館なんかは衝撃的なのでもし機会があったら
ご覧になってみてくださいw
僕も桜の国が始まるとなかなか馴染めませんでした。
これが時代の温度差なんでしょうけど映画からも気持ちが
離れちゃいますよね。
堺さんの行動は不審すぎましたし(笑)
まぁでも素敵な映画ではありましたね。
年に1回この時期にでも原爆や戦争について考えることって
大事だと思うし、いいきっかけになりました。
私のほうからも送らせて頂きましたが、不調の為、反映されなかったら申し訳ありません。
ご自身の貴重な体験談、興味深く読ませていただきました。
仕事を通じて知り合った方や、先輩に広島出身の方が何人かいますので、仰る事がよくわかります。
なので、「夕凪」の原爆スラムで暮す人たちが明るく描かれていても、
きっと皆実のように、たくさんの人たちがひっそり亡くなっていた事が想像でき、堪りませんでした。
原爆の日の前日に観て来たのですが、まだ上映されているようで嬉しいです。
たくさんの若い世代にも観てもらいたい映画です★
私も広島には1回しか行ったことはなく、そのとき資料館も見たのですが、悲惨な光景にショックを受けた記憶があります。
広島の人たちが戦争や被爆に対してそこまで中立的な立場で物を語るというのは私もちょっと意外に思いました。
私の記事では、広島の日には思いは伝わっていない、不十分な映画だ、と書いていますが、それに付いたコメントで、特に後半広島市民からたくさん感動したというのを頂きました。私の意見はうがったものだと確信しました。広島の人にもストレートに思いが届いています。もしコメントまで読んでいなかったら、ぜひお読み下さい。
広島で平和イベントに参加したお話、興味深く読ませていただきました。
そのイベントに来られる方の多くがヒロシマについて学ぶことを望んでおられたとしたら、確かにヒロシマのことを強く伝えてもいいように思いますね。
しかし同時に広島人として「被害者的な立場だけで語ってはいけない」という感覚も漠然と理解できるような気もします。
平和に関する活動を日々されている方なら、様々な国や立場の人の反応を直に感じることが多いでしょうから、余計そうなのかもしれません。
で、この映画の原作にはないセリフ「落ちたんじゃない、落とされたんよ」にはやはりちょっと驚きました。
これはこの物語にたずさわることで生まれた監督の強い気持ちなのかな…と思いました。
なんにせよ、より多くの方に観てもらいたい素晴らしい作品だったと思っています。
こんにちは♪
コメントありがとうございます!
TBも無事反映されてました^^
きっとひっそりと亡くなった方はたくさんいるんでしょうね。。
まだ原爆症を認められない方もたくさんいますし。
僕が観た時は若い方もかなりいました。
ほんと若い世代に観て欲しいですね。
夏のこの時期だけでも原爆や戦争というものを考えるきっかけになればいいなと心から思います。
ただ、実際に広島に住んでおられた方や被爆された方の感想というのはお聞きしたことがないんです。
もしかしてそっと静かにしておいて欲しいと思っておられる方もいらっしゃるのかもと思いました。
アノ日の受け止め方はそれぞれ違うのかもしれませんし・・・。
こんにちは♪
コメントありがとうございました!
広島に行かれたことがあるんですね〜
資料館は見るのも辛い資料がたくさんありますけど
やっぱり見ておかないといけないと思います。
2度とあんな悲劇は起こしてはいけないですよね。
中立的立場を取るのは被害ばかり訴えても聞いてもらえない
という経験からだと思います。
でも自分たちが凄い被害を受けたのに自分の罪ばかりを
攻める姿はなんだか悲しくも見えました。
TBどうもありがとうございました。
広島の方の原爆、戦争への思い、
県外の私たちよりも強いものがあるのだとは
感じていましたが、、、
中立性を重んじるというエピソードに、
なるほどなぁと思いました。
自分たちがつらい思いをしたからこそ、
なおさら相手の立場になって、
相手の痛みもわかってしまうのかもしれません。。
後半のコミカルさは、
私もちょっとちぐはぐに感じました^^;;
トラックバックありがとうございます。(*^-^*
>「私はこの2人を選んで生まれてこようと決めたのだ」ってセリフは印象的でした。
私もこの台詞が印象深く、涙しました。
原爆について、家族について考えさせられました。
そして、家族や周囲の人々を思いやる気持ちを大切にしたいと心から思った作品でした。
私は原作の方を先に読んでいた為(もともとは「ぴっぴらノート」のファン)映画にはかなり違和感を感じました。なんというか、皆実の死を「綺麗な悲劇」に描きすぎているというか……。「桜の国」の方は、シナリオの構成に難があり、七波の抱える寂しさや東子に対するコンプレックスを描ききれていませんでしたし(原作では子供時代、東子を出迎える母親の「お帰り」という声を聞きながら、一人で鍵を開けて誰もいない自宅に入る、というシーンがあります)
「桜の国」の中の「なのに私も凪生も原爆のせいで、いつ死んでもおかしくない人間と決め付けられたりするのだろうか」という台詞。この台詞の中の「きめつける」のは、原爆とは普段縁のない人々、原爆は「他所の家の事情」だと思っている人々、私を含むそういう人達に向けられた言葉だと思っているのですが(無意識のうちに、私達自身の中で「被爆者」「被爆2世」というレッテルを貼ってはいないだろうか)、その重みを感じ取ることのできる人が殆どいなかったことが、とても残念に思えます。
こんにちは♪
コメントありがとうございました!
広島の方にもしっかり届いてるんですね〜。
ストレートなセリフに拒絶反応が出てる人もいるのかなぁ
と思ったんですけど、良かったです。
コメントまで目を通してなかったのでまたお邪魔します。
こんにちは♪
コメントありがとうございました!
広島で平和や核廃絶を訴えてきた方々はやっぱり被害を
訴えるだけじゃ聞いてもらえないという経験があるんでしょうね。
だからこれからもヒロシマが平和を訴えていくためにも
国もしっかり考えていかなくちゃいけないなと思いました。
全体的に抑え目な演出でしたけどセリフはストレートなものも
ありましたよね。
「落とされたんよ」は原作にないと聞いて驚きました。
ってことは、その部分は監督の思いなんでしょうね。
そこはハッキリ主張してくれて嬉しかったです。
ほんと多くの方に観てもらいたいですね。
こんにちは♪
やっぱり日本人としてはしっかり考えないといけないですよね。
学校なんかでもこういうのを学ばせて欲しいのに。。
(この時期が夏休みってのもあるんでしょうけど)
あまり触れて欲しくないってのはあるかもしれませんね。
僕が広島にいるときもイベントや授業以外はほとんど
原爆の話はしたことがないです。
誰が2世3世だとかも聞いたことがないし、親類が被爆したとかも
会話に出てきたことがない気がします。
語り継がなければいけないけど忘れたいものなんでしょうね。。
こんにちは♪
コメントありがとうございました!
僕も広島だから原爆の被害をある種ヒステリックな程
主張しているのかなと思っていたんですけど
真逆でビックリでした。
でもそこに歴史の重みも感じました。
「桜の国」はチグハグに感じちゃいますよね。
「夕凪の街」が心に響いただけにギャップに戸惑いました。。
こんにちは♪
コメントありがとうございました!
原作を読んでいないのでRicさんの記事がすごく参考になりました。
僕も皆実のキャラは原作の方がいいような気がします。
麻生さんも良かったんですけど、もっと元気で激しい(怒りっぽい)
キャラの方が悲しみは強かったのかも。
「桜の街」もカットされてる部分が多かったから
微妙な違和感があったんですね。
やっぱり優れた原作の映画化って難しいですね。
近いうちに原作も読んでみたいです。
原作の評判が宜しいようですが、私は未読な為、それなりに心に残るものを感じられて良かったです。
やはり私も広島とは遠い県なために、イマイチ身近さは感じられていないのですが、「まずは知るところから始めよう」、ですよね。
こんばんは♪
直接原爆を描いてはいないですけどグッと心に響くものが
ありますよね。
>「まずは知るところから始めよう」
そうそう、それが大事ですよね。
興味を持つことで色んな情報もキャッチできるようになるし
そのきっかけになるといいなぁと思いました。
TBを頂いた後に暫く留守にしていたので、お返しが遅くなり申し訳ありませんでした。
原爆どころか戦争自体の経験も無く実感を感じられない世代が増えてきた今、こういった形であの時代に何があったかを断片的であるにせよ知らせていくことは必用だと思っています。
作中に登場したイラストの数々が、最も切実に心を抉りました。
また、被爆された方々に対して、未だにどこかで小さな差別が行われていることすら知らなかったことが恥ずかしいです。
TBのお返しをさせていただきました。
こんにちは♪
こういう映画って大事ですよね。
現代史ってなかなか学校で教えてもらえないし
映画から学べることって多いです。
劇中のイラストは確か原爆資料館で見たことがあるような
気がするんですよね(違うかも)。
子供が書いた絵だけにストレートに恐怖が伝わってきました。
僕も広島に住んでいたんですけど2世3世があったことは
知りませんでした(汗)
やっぱり結婚なんかになると出てくるんでしょうね。。
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